目次
導入
行政書士試験は法律科目が中心ですが、多くの受験生が悩むのが「基礎知識(旧:一般知識等)」です。法律科目で高得点を取っても、この基礎知識で基準点を下回ると不合格になる、いわゆる「足切り」があります。
ただし、出題範囲をすべて網羅する必要はありません。重要なのは、得点源にしやすい分野を確実に押さえ、効率的に合格ラインを突破することです。本記事では、基礎知識の全体像と優先度の高い分野、足切りを避ける学習戦略を解説します。
行政書士試験「基礎知識」の全体像と足切りライン
法改正で「一般知識」から「基礎知識」へ変わった背景
2024年度から「一般知識等」は「基礎知識」へ名称変更されました。これは、試験内容をより実務に即したものにするためです。ただし、実際の出題範囲は大きく変わらず、従来の「一般知識」問題も含まれています。
出題数・配点と足切り基準「14問中6問」
基礎知識は全14問、配点は1問4点で合計56点。6問(24点)以上の得点が必須です。これを下回ると、総合点が合格ラインを超えていても不合格になります。
なぜ多くの受験生がここでつまずくのか
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出題範囲が広く、政治・経済・社会問題から最新のIT知識まで含まれる
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法律科目中心の学習になりやすく、基礎知識に十分な時間を割けない
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「運任せ」と割り切って勉強せず、結果的に足切りになるケースが多い
基礎知識対策で押さえるべき3つの優先分野
文章理解 ― 確実に得点源にできる理由と解き方のコツ
文章理解は長文読解問題が中心で、法律知識は不要です。国語力で解けるため、対策すれば誰でも得点源にできます。ポイントは「接続詞」「因果関係」「指示語の内容」を正しく読み取ることです。
諸法令 ― 行政書士業務に直結する範囲での得点戦略
行政書士法や関連法令からの出題は比較的多く、範囲も狭いため学習効果が出やすい分野です。特に「行政書士法の業務内容」「守秘義務」などは毎年のように問われています。
情報通信・個人情報保護 ― 出題頻度が高く落とせないテーマ
近年の基礎知識で安定して出題されるのがIT関連と個人情報保護法です。用語や法改正が絡み難しい面もありますが、頻出論点に絞れば得点しやすい分野です。特にマイナンバー制度や個人情報の定義は必ず押さえましょう。
足切りを避けるための学習戦略ロードマップ
一般知識
政治・経済・社会問題は範囲が広大で、深追いは非効率です。新聞や時事問題集で基本を確認する程度で十分です。私はここは勉強しても得点につなげることが難しいと感じて捨てました。実際の試験では一応問題は読み推測してみたり、解答の肢を見て数値が大きく離れてるようなものは多分違うと判断して数値が近いところから適当に選びました。
諸法令
範囲が狭いため、短時間でも得点につながりやすい分野です。過去問を繰り返し、条文を丁寧に確認しましょう。諸法令と情報通信・個人情報保護は過去問の範囲と周辺の条文を確認しました。
情報通信・個人情報保護
法改正点や基本用語に絞って暗記すると効果的です。直前期の確認でも得点につながりやすいのが特徴です。
文章理解
出題数が安定しており、確実に点を稼げます。練習量がそのまま得点に直結するため、最優先で取り組むべき分野です。ここははっきり言えば国語です。私は国語の長文の読み方のテキストを買って勉強しました。そのときのポイントを後述します。
文章理解攻略
接続詞に注目
文章理解では、接続詞が論理展開を見抜くカギになります。例えば「しかし」「つまり」「一方で」といった語を意識するだけで、筆者の主張や文章構造を把握しやすくなります。まず問題文の接続詞を探して○で囲いました。そのあと問題文のターゲットになっている文に線を引いてました。その線を引いた前後や付近の接続詞に答えがあります。以下の例題で緑の部分が問題文のターゲット論点として線を引く場所、オレンジ色が接続詞として囲む場所です。実際はもっと長文のためこの例題のようにはいかないですが、慣れれば文章理解は得点源になりますし、合格レベルにある人は必ず抑えてきます。
実践編(例題付き)
例題1
人間の判断は必ずしも合理的とは限らない。たとえば株式市場では、多くの投資家が群集心理に流される。しかし、行動経済学の研究によれば、人々は損得だけで動くのではなく、「公平さ」や「安心感」も重視している。つまり、市場の動きを理解するには心理的要因を無視できない。
設問
筆者が最も伝えたいことはどれか。
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株式市場は合理的判断で動いている
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人間は常に合理的に行動している
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行動経済学は人間の心理的要因に注目している
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公平さや安心感は市場とは無関係である
正解:3
「しかし」で逆説が示され、「つまり」で筆者の結論がまとめられています。接続詞をたどるだけで答えにたどり着ける典型的な例です。
例題2
地方都市では人口減少が進んでいる。その結果、公共交通の利用者が減り、維持が困難になっている。一方で、リモートワークの普及により都市部から移住する人も増えており、地方の新たな可能性が注目されている。
設問
筆者が最も伝えたいことはどれか。
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地方都市の人口は増加傾向にある
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地方都市には課題と可能性の両面がある
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公共交通の利用者は今後必ず増える
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リモートワークは地方都市に悪影響を与えている
正解:2
「一方で」で対比が示され、前半は課題(人口減少)、後半は可能性(移住増加)が提示されています。両面を踏まえるのが筆者の結論です。
例題3
次の文章を読んで、設問に答えなさい。
近年、オンライン教育の普及が進んでいる。インターネットを通じて授業を受けられるため、時間や場所に縛られない学習が可能になった。しかし、すべての生徒が同じ環境を利用できるわけではなく、通信環境や家庭のサポート体制の差が学習格差を広げる要因にもなっている。
一方で、対面授業には直接のコミュニケーションや協働学習の強みがある。教師が生徒の表情を見て理解度を確認できる点や、友人とのやり取りを通じて社会性を育める点は、オンラインだけでは補いにくい。したがって、教育の将来を考える際には、オンラインの利便性と対面の教育効果の両方をどう活かすかが重要になる。
【設問】
上記の文章のうち、「オンライン教育」に関する筆者の主張として最も適切なものはどれか。
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オンライン教育は、誰にとっても平等に利用できる環境が整っている。
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オンライン教育は、場所や時間に制約されない利便性がある。
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オンライン教育は、対面授業と比べて教育効果が高い。
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オンライン教育は、今後廃止されるべき制度である。
👉 正解:2
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「オンライン教育」の論点では「時間や場所に縛られない」という利点が筆者の強調点。
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ただし「しかし」で環境差による格差も指摘されている。
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設問は「オンライン教育に関する筆者の主張」を問うので、結論部分「利便性」に焦点を当てた 2 が正解。
このように、文章理解では接続詞周辺に答えの根拠が隠れていることが多いのです。過去問演習の際は接続詞をマークし、解答の手がかりにしましょう。
まとめ ― 効率重視で基礎知識を突破する
行政書士試験の基礎知識は、多くの受験生にとって大きな壁です。しかし、足切りを避けるために必要なのは「すべてを学習すること」ではなく「取れるところを確実に取ること」です。
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文章理解で安定した得点を確保する
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諸法令と情報通信・個人情報保護で効率よく加点する
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一般知識は基本事項だけ押さえる(または捨てる)
この戦略を徹底すれば、法律科目の努力を無駄にせず、基礎知識を突破できます。最新の試験要項を確認しつつ、効率的に合格を目指しましょう。
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